【東京五輪エンブレム問題】難しい類似性の評価 「あり得る」と専門家ら
2015/08/01 国際2020年東京五輪の公式エンブレムがベルギーの劇場ロゴに酷似していると指摘され、波紋が広がっている。問題視する声が上がる一方で、デザインの専門家からは「似ることはあり得る」という意見も出ており、デザインの類似性に対する評価の難しさが浮き彫りになっている。
1998年長野冬季五輪のエンブレムをデザインした篠塚正典さんは「モチーフが(他のデザインと)かぶることはよくある。類似のものがないかどうかの調査は、専門家が事後的にするもので、デザイナーに責任はない」と説明する。
長野五輪では、デザイン案が絞られた段階で、専門家が2カ月以上かけて調査を実施。その上で最終選考が行われたという。「問題があったとすれば、デザインそのものではなく、調査の方法では」と篠塚さん。
そもそも二つは「似ていない」とする見方も。デザイン評論家の柏木博さんは「まったく違うデザインで盗用とは言い難い」と話す。一般的に同じ文字を定規とコンパスを使って幾何学的にデザインとすると、似た形になることはあるという。
ただ、今回のアートディレクター佐野研二郎さんによるエンブレムは、中央を縦に貫く帯の周囲に白い円が浮かぶようになっている点が、劇場ロゴとは大きく異なると指摘。「制作者はこの円を意識したのでは。日の丸が連想され、和を感じさせる」と分析する。
エンブレムの類似は開幕まで約1年となったリオデジャネイロ五輪でも問題となった。3人が手を取り、輪になって踊る姿をイメージしたエンブレムが2010年末に発表されると、米コロラド州で児童福祉や環境保護に取り組む財団のロゴに似ているとの指摘が湧き上がった。
リオ五輪のエンブレムを手掛けたデザイン会社側は類似性を認めながらも「人々が手を取り合うというアイデアはどこにでもある」として盗用は否定。財団は国際オリンピック委員会(IOC)などにエンブレム取り下げを求めているが、応じる姿勢はないという。
東京五輪のエンブレム問題はどうなるのか。佐野さんは31日、コメントを発表し「報道されている海外作品については全く知らないもの」と盗用を否定している。
しかし、国際商標に詳しい宮永栄弁理士によると、ベルギーの劇場側が、同国などの商標を管理するベネルクス知的財産庁に訴えるケースも想定されるという。同庁が劇場側の主張を認める事態となれば、国際機関に商標保護の拒否を通知し、ベルギー国内などで東京五輪のエンブレムは使用できなくなる。宮永弁理士は「そうならないためにも、当事者間で『大人の話し合い』をすべきだ」としている。
(共同通信)
本文章は『47NEWS』から転載されたものです。